| | 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
シンポジウム S28-1 (Presentation in Symposium)
ネコがマタタビに頭や体を擦り付ける「ネコのマタタビ反応」は,一般にもよく知られた動植物相互作用である.ネコのマタタビ反応はマタタビが自生する東アジアで知られているが,マタタビが自生しないヨーロッパではネコがイヌハッカ(キャットニップ)に対して同様の反応をすることが知られてる.マタタビとイヌハッカは遠縁の植物であるが,共にイリドイドを合成し,それぞれネペタラクトールまたはネペタラクトンを蓄積し,これらがネコのマタタビ反応の原因成分である.発表者の西川・宮崎らは,ネコのマタタビ反応は,ネコが蚊の忌避活性を有するイリドイドを,体に擦りつけるための行動であることを明らかにした(Uenoyama et al. 2021, Sci Adv, doi: 10.1126/sciadv.abd9135).
本研究では,マタタビを含むマタタビ属植物とイヌハッカのイリドイドの蓄積と放出を明らかにするために,クロマトグラフィーを有せず,試料への針刺しにより成分をサンプリングし,針先に付着した成分を直接イオン化して分析を行うPESI/MSと,試料が発する揮発性成分を直接イオン化して分析を行うAPCDI/MS,2種類のアンビエントイオン化質量分析装置を用いて分析を行った.その結果,イヌハッカは葉にネペタラクトンを蓄積して常時放出するのに対し,マタタビは葉にネペタラクトールを配糖体として蓄積し,通常はほとんど放出しないが,葉が傷つくことで加水分解酵素が反応してアグリコンのネペタラクトールが放出され,2種の植物におけるイリドイドの蓄積形態と放出機構が異なることが明らかとなった.本発表では,マタタビの葉に蓄積するイリドイド配糖体の同定,マタタビとマタタビ以外のマタタビ属植物のイリドイドの蓄積器官の違い,さらにマタタビ属植物やイヌハッカがイリドイドを蓄積する生態学的意義(昆虫への作用)についても議論したい.