| | 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
シンポジウム S28-6 (Presentation in Symposium)
送粉共生系はシンプルな植物の種子繁殖メカニズムの一環でありながら、被子植物の多様性を象徴すると言えるほど分化・多様化している。特に、花が特定の昆虫種だけを誘引し、送粉されるという事実は、送粉共生系に昆虫の行動を制御するメカニズムを内包していることを意味しており、そのメカニズムを担う実体として複雑な情報を持ちうる花の香りは特に興味深い形質である。したがって花の香りの多様性の起源を理解することは送粉様式の多様化を理解する上で鍵となると考えられる。
日本列島で顕著な多様化を遂げた系統群であるユキノシタ科チャルメルソウ属、ウマノスズクサ科カンアオイ属、サトイモ科テンナンショウ属はいずれも種間で総じてゲノム構成が極めて類似しているにも関わらず、花形質に顕著な多様性が見られる点で特筆に値する。そして、この多様性の進化的成因となったのが送粉者との関係であり、そこには花の香りが需要な役割を果たしていることをこれまで明らかにしてきた。
本発表では、このような送粉者特異性を規定していると考えられる特定の花の香り分子を取り上げ、その生態的機能から遺伝・進化基盤までを一体的に解明することを目指す一連の研究について紹介する。