| | 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
自由集会 W01-3 (Workshop)
TNFD用の指標をNPIが検討し、自然の状態指標(SoN)を提案している。2025年3月に以下の指標案が示され、2026年2月には1,3,6,7を中心にサイトと景観とで評価するよう更新予定である「1.生態系の広がり,2.自然・半自然生息地の割合,3.サイトの状態,4.周辺景観の完全性/連結性,5.半自然生息地の状態,6.種の絶滅リスク,7.種の生息数」。
本研究では、熊本県球磨盆地の湿地(池の造成を含む刈り取り草地)においてSoNのパイロット評価を実施した。特に空撮による土地利用変化、衛星画像解析、植生調査、eDNA観測、トラップによる個体数調査を行った。
その結果、ドローン等の目視判読からは、IUCNの地球規模生態系分類(GET)相当で池や放棄田の増加を評価できた(指標1,2で推奨)。一方で、指標3の状態評価にNDSI等を算出したが、池以外の変動が大きく効果的でなかった。指標4も周辺50kmでの評価は、広域の高解像度画像と自動分類法開発無しには困難であった。
現地調査のうち、eDNA観測は希少種を含む水生生物相が検出でき、植生調査と合わせて、指標6のSTAR指数を算出。STAR指標はRedListのランクと生息地の全分布域に対する割合から算出されるため、GBIFや広域の調査データが必要である。また、eDNA調査は池よりも水路や川など水が集まる場所で多数の種が検出されやすく、課題もあった。
トラップによる個体数調査のDynamic N-mixtureによる解析から、希少種イシガメがやや減る一方、アメリカザリガニの個体数が増加し、種レベルでは生物多様性の向上と必ずしも言えない実態が明らかになった。
そのため、外来種対応が本サイトの次の課題であると示すとともに、リモートセンシングによる生態系レベルの評価と、種レベルでの詳細な生物相評価を適切に組み合わせることの重要性が示唆された。SoN指標の実用化に向けては、異なる地域を比較可能にする統一手法が期待される一方で、現地の質の評価をどう適切かつ簡便に、比較可能にしていくかの議論が必要である。