| | 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
自由集会 W02-2 (Workshop)
気候変動により気温上昇しても降雪が続く日本の日本海側の山間部や北欧などの多雪地域では降雪の湿雪化が予測されている。湿雪化は樹冠への着雪量を増大させ、幹折れリスクを高めると指摘されている。ただし、既存の物理モデルでは、樹冠や幹の一部が雪上に出る成木を対象としており、個体全体が埋雪する若木に対する議論は十分になされていない。成木に限らず、生活史を通して稚樹や若木が直面しうるリスクを評価することは多雪地林が今後維持されるのかを明らかにする上で重要である。そこで、本研究では将来の降雪環境変化に対する樹木の物理的リスクとその後の応答を評価するために、①埋雪木を対象とした物理モデルを構築し、そのモデルを活用し樹木の雪圧による曲げ応力の挙動を解析し、そして②雪圧による物理的ストレスを受けた埋雪木が雪上木になる過程で雪圧耐性を獲得する物理的なプロセスを解明した。
埋雪木は初冬に冠雪することで幹が変形し、その後積雪量の増加に伴い個体全体が埋雪する。そのため、埋雪木に生じる雪由来の外力を冠雪と積雪の二つのフェーズに分けて、幹全体に生じる曲げ応力を解析する物理モデルを構築した。その結果、冠雪量の増加自体は幹の曲げ応力を大きく増加させないが、冠雪によるわずかな幹変形が積雪後の曲げ応力を増大させることが分かった。
次にブナを対象に埋雪木から雪上木にかけての幹のかたさとかたちの変化について解析した。曲げ剛性は曲げ弾性係数(E)と断面二次モーメント(I)の積である。ブナは幹の地際側ではI、先端側ではEをそれぞれ高めることで、埋雪木から雪上木にかけて幹全体の曲げ剛性を高めていた。そして、ブナは幹に成長応力を発生させることで、雪圧により倒された幹を起き上がらせ、積雪による負荷を減少させていた。よって、ブナは埋雪木から雪上木にかけて幹のかたさとかたちを変化させ、雪圧耐性を獲得していることが示唆された。