| | 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
自由集会 W02-3 (Workshop)
冷温帯林では、温暖化で展葉が早められると急激に気温が低下するような気象条件に新葉が曝されるリスクが高まることが懸念されている。展葉時期の低温で葉は損傷しやすくなることが知られるが、芽や葉が低温に脆弱になるメカニズムはよくわかっていない。冬芽は気温上昇に伴う吸水と膨張によって展葉するため、吸水プロセスが低温に対する芽や葉の生理応答を変化させる可能性がある。春先の突発的な低温が多雪林の衰退にどう関与するかを評価する上で、芽および葉の水利用に関する生理特性の季節変化から展葉のプロセスを明らかにする必要がある。
落葉広葉樹の芽/葉について、含水率の季節変化とともに、水ポテンシャル(ΨW)の変化に対する相対含水率(RWC)の変化から求められるP–V曲線から、キャパシタンス(C )、体積弾性率(ε)、膨圧喪失時のΨW(Ψtlp)の季節変化を調べた。
気温上昇に応答し、ΨWの変化に対する含水率の変化が大きくなることを意味する芽および葉のC の上昇が、展葉に向けた吸水・膨張を駆動していることがわかった。高いC はεの低下と関連していたことや、この時にΨtlpが上昇することから、芽/新葉の膨張性に細胞壁の柔軟性が寄与するが、同時に膨圧を失いやすく低温に脆弱になる可能性が示唆された。そこで、冬季の芽・膨張芽・新葉・成熟葉を− 8 °Cと− 3 °Cの低温に一晩曝露し、その後の損傷率から芽/葉の生理特性の季節変化と、低温脆弱性との関連を調べた。損傷率の季節変化は曝露した温度によって異なり、− 8 °Cに曝露すると展葉の直前から葉の成熟後も高い損傷率を示し、浸透ポテンシャルの上昇が関連していた。− 3 °Cに曝露すると展葉の直前から葉が成熟するまでに一時的な高い損傷率を示し、εの低下による柔軟性が関連していた。
近年の温暖化による融雪早期化は芽の吸水・膨張を早め得る一方で、春先に氷点下となる問題が依然として報告されており、多雪林の膨張芽や新葉は萎れのリスクを孕む可能性がある。