| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


自由集会 W07-2  (Workshop)

承水路造成は生物共生農法として有効か?
Is ditch construction effective as a wildlife-friendly practice?

*西川潮(金沢大学), Fitrah K SIREGAR(Andalas Univ.), A. AADREAN(Andalas Univ.), Jabang NURDIN(Andalas Univ.), 富田幹次(高知大学)
*Usio NISIKAWA(Kanazawa Univ.), Fitrah K SIREGAR(Andalas Univ.), A. AADREAN(Andalas Univ.), Jabang NURDIN(Andalas Univ.), Kanji TOMITA(Kochi Univ.)

西スマトラ州パダン市郊外を流れるバタン・アナイ川中下流部の水田地帯では、農業の集約化と浅水管理の影響により、かつて普遍的に見られたウナギ類などの在来魚類が消失する一方、外来種スクミリンゴガイが多発生し、イネに甚大な被害を与えている。現地農業者は、水田内にバンダ・ケオン (巻貝水路の意)と呼ばれる浅溝を造成し、スクミリンゴガイの駆除管理を行なっている。一方、これまで新潟県佐渡市で行われた研究から、水田内に「江(え)」と呼ばれる承水路を造成すると、夏期・冬期ともに底生動物の多様性が増加することが示されている(西川ら2015, 日本生態学会誌65, 269-277)。本研究では、西スマトラの水田において、佐渡市の江に準拠した承水路の造成が、水田の底生無脊椎動物の多様性に及ぼす影響を検討した。
野外実験は、稲作が地域で同調せず各自のタイミングで行われるルブ・アルン(アシンクロノス地域)および地域で同調して行われるカユ・タナム(シンクロノス地域)の2地域において、それぞれ8筆の水田を選定した。各地域で4筆にはバンダ・ケオンを造成し(対照区)、残り4筆には水田内の2面に幅・深さ約30cmの江を造成した(江造成区)。
その結果、ルブ・アルンでは、処理区間で底生無脊椎動物の総生息数や分類群数に統計的有意差は認められず、栽培初期の一定期間のみ、トンボ目幼虫の生息数が対照区と比べて江造成区で多い傾向が認められた。カユ・タナムにおいても、底生無脊椎動物の総生息数および分類群数は処理区間で差が認められなかった。スクミリンゴガイの生息数についても処理区間で有意差は認められなかったが、底生無脊椎動物の分類群数が多い時期には、対照区と比べて江造成区で腹足綱(5種)の総生息数が多かった。西スマトラの水田において江の造成効果が限定的であった理由と今後の課題について考察する。


日本生態学会