| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


自由集会 W09-3  (Workshop)

UAV-LiDARによる樹冠構造の多個体フェノタイピング
High-throughput phenotyping of canopy structure using UAV-LiDAR

*亀井啓明(京都大学)
*Hiroaki KAMEI(Kyoto Univ.)

樹冠は炭素固定の場であり、その三次元構造は光の獲得と分配を通じて個体の成長速度を規定する。樹冠構造を正確かつ効率的にフェノタイピングすることは、樹木の成長特性や環境応答を理解するうえで重要である。従来、成木の樹冠構造の定量的な評価には多大な労力を要したが、近年UAV-LiDARが普及し、森林や樹冠の詳細な三次元構造を計測できるようになった。本技術によって、樹冠構造を非破壊かつ効率的に計測でき、多数個体を比較することが可能となった。
本発表では、具体的事例として、樹冠構造と成長速度の関係について、2364個体(401クローン)の25年生スギを解析した研究を紹介する。スギの成長速度には系統間で大きな差が見られるが、その要因は十分に解明されていない。成長速度の差は、光の獲得量と、獲得した光をバイオマスに転換する効率(光利用効率)によって規定される。スギの樹冠の大きさや形状、葉の量や分布などには、系統間で大きな変異があり、光獲得と光利用効率のそれぞれに影響すると考えられる。UAV-LiDARで測定した三次元点群データを個体ごとに抽出して、樹冠サイズ、樹冠形状、葉の空間分布に関わる構造指標を定量化し、成長速度との関係を検証した。その結果、成長の違いは樹冠の占有面積よりも占有面積当たりの成長速度の違いに強く規定されることが示された。また、成長に優れる系統は、樹冠の先端が尖り、上部の葉の密度が低く、樹冠内部での光の減衰を緩やかにする構造を有していた。
本発表では、UAV-LiDARによる個体スケールでの高精度フェノタイピングの技術的枠組みを整理するとともに、森林生態研究および育種研究への展開について議論する。


日本生態学会