| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


自由集会 W12-1  (Workshop)

病原体が生み出す真菌の同種自他認識遺伝子の驚異的な多様性の進化
The evolution of remarkable diversity in fungi allorecognition genes driven by pathogen

*南駿, 佐々木顕, 大槻久(総合研究大学院大学)
*Shun MINAMI, Akira SASAKI, Hisashi OHTSUKI(SOKENDAI)

 多細胞性の生物である真菌は近縁な、あるいは遺伝的に同一な細胞で構成されるコロニーを形成する。コロニーを形成するための体細胞融合は遺伝的な自己/非自己認識システムによって制御されており、その認識遺伝子座の著しい多型が長年注目されてきた。真菌は自己と細胞融合し栄養交換する一方で、非自己とは融合せずこれがウイルスに対する感染防御機構として働く。本研究では真菌を宿主とするウイルスに注目し、疫学動態と真菌の生活史を反映した個体群動態モデルを解析し、多様性が生み出される条件を理論的に明らかにした。
 本研究の解析によって、「不完全な体細胞不和合性」と「ウイルスの蔓延」が組み合わさることで、真菌における自他認識遺伝子の著しく高い、あるいは無制限の多様化が創出されることが示された。これは、不完全な自他認識システムのもとではウイルスが感染防御をすり抜けることができ、宿主の多様化によって感染効率が落ちても、個体群を維持できるためである。本研究によって得られた多様性の維持メカニズムは、実際の真菌が持つ不完全な自他認識システムの進化や野外の真菌集団の自他認識遺伝子の多様性のデータを説明できる可能性がある。
 微生物においては認識の遺伝的メカニズムが動植物に比べて比較的単純である。そのため、自他認識に関わる遺伝子座の多様性や役割を実験的に検証できる可能性を秘めている。真菌を用いた認識機構の進化理論と実証研究の可能性について議論したい。


日本生態学会