| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


自由集会 W12-3  (Workshop)

人為選抜がもたらした作物の遺伝子型認識の進化と多様な応答
Evolution and Diversity of Genotype Discrimination in Crops Driven by Artificial Selection

*金子拓斗(京都大学), 小杉那緒(弘前大学), 吉田健太郎(京都大学), 山尾僚(京都大学)
*Takuto KANEKO(Kyoto Univ.), Nao KOSUGI(Hirosaki Univ.), Kentaro YOSHIDA(Kyoto Univ.), Akira YAMAWO(Kyoto Univ.)

植物は隣接個体よりも多くの資源を獲得するために、地上部や地下部へ過剰な投資を行う競争的な応答を進化させてきた。一方で、農地のような同種が密生する環境では、このような競争的な応答は集団全体の収量性を著しく低下させると考えられる。しかし、人為選抜が施された作物品種は、同品種が集約的に生育する環境でも、高い収量性を維持している。このことは、種内競争、特に遺伝的に近縁な同品種との競争を緩和する応答が直接的または間接的に選抜されてきた可能性がある。本研究では、この予測を検証するため、パンコムギ10品種を用い、競争相手の遺伝子型に基づいた資源配分と地上部の応答を比較した。その結果、うち4品種では同品種に対して地下部への資源投資を抑制し、他品種に対しては顕著に増加させるという、競争相手の遺伝子型に基づく明確な応答の違いを示した。一方、残りの6品種では、このような応答は認められなかった。競争相手の遺伝子型に基づく明確な応答は、収量向上を目指した人為選抜が施された品種で顕著であった。一般に、根への投資割合の増加は地下部の資源を巡る競争に有利とされている。そのため、今回確認された同品種に対する応答は、競争緩和の応答であると考えられる。また、植物は地下資源を巡る競争だけでなく、地上部では光を巡って競争する。応答が見られた品種を用いて地上部の応答を見たところ、同品種には主稈と分げつ(イネ科植物における側枝)の間の角度(以降、分げつ角度)を小さくする応答を示し、他品種には大きくする応答を示した。分げつ角度の増加は光競争に有利と示唆されており、同品種への分げつ角度を小さくする応答は、競争緩和の応答の可能性がある。以上の結果から、同品種個体間の競争を軽減する応答形質は、収量向上を目指した人為選抜により間接的にもたらされてきた可能性がある。本発表では、これらの結果を基に応答の多様性についてまとめる。


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