| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


自由集会 W12-4  (Workshop)

シロアリの北限個体群における巣仲間認識の喪失とそれに関連する生態的要因
Loss of nestmate recognition in a northern peripheral population of a termite and its related ecological factors

*矢部清隆, 道又啓史, 高田守, 松浦健二(京都大学)
*Kiyotaka YABE, Hirofumi MICHIMATA, Mamoru TAKATA, Kenji MATSUURA(Kyoto Univ.)

社会性昆虫は血縁個体で構成されたコロニーという明瞭な単位を形成し、分業や協力行動を通してコロニー単位の生産性を最大化する。コロニー内の協力関係は他者からの搾取を防ぐ巣仲間認識の上に成立しており、これは自他認識の最たる例であるといえる。その一方で、一部の社会性昆虫においてはコロニー境界が不明瞭になり融合が生じたり個体群規模の巨大コロニーが形成されたりする例が見られる。本発表では、このような「自他認識が維持されなくなる条件」に焦点をあて、社会性昆虫における既存の研究を俯瞰しつつシロアリにおける融合コロニー性の研究事例を紹介する。
発表者らは、ヤマトシロアリの生息地の北限に位置する北海道個体群での血縁構造の解析から、この地で融合コロニーが一般的であることを示唆する結果を得た。飼育実験ではこの個体群のコロニーが同種に対する敵対性を失っていることが示され、このことが融合コロニーを形成する要因となっていると考えられる。さらに北海道の個体群は、繁殖様式および分散様式の両面において本州の個体群に見られない特異な社会構造を有していることが示唆されており、融合コロニー化は気候などの環境要因と社会構造の両者の影響を受けて生じたものと考えられる。上述の事例や既存の研究から、巣仲間認識の喪失を招く要因について考察し、自他認識と生態的要因の相互作用について議論したい。


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