| | 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
自由集会 W13-1 (Workshop)
捕食・被食関係は長らく野生動物学における中心テーマの一つとなってきたが、最近は捕食による間接効果としての捕食リスクと被食者応答への関心が高まっている。1990年代後半に提唱された恐れの景観(landscape of fear)の概念以降、捕食者に対する「恐れ」とその波及効果としての「ストレス」について、被食者の行動・生態・生理的な応答に関して様々な動物種や生態系を対象とした研究が行われてきた。また、捕食・被食にかかわる議論と興味は、(超)捕食者としての人間(ヒト)と被食者としての(捕食性の動物種を含む)野生動物との関係へと拡張され、人間活動に伴う恐れやストレスは保全生物学や野生動物管理における主要トピックの一つとなりつつある。多くの中大型哺乳類にとっての天敵であったオオカミが絶滅した日本では、現在では人間が唯一の捕食者となっている。近年では、国内においても中堅・若手研究者を中心に、人間活動に伴う恐れやストレスを扱った研究や議論が広がりを見せつつある。これまでの国内における野生動物管理は捕獲に伴う致死的効果にのみ着目した個体群管理が主流となってきたが、人間に対する恐れやストレスに関する科学的な理解を深め、恐れの景観を応用した新たな管理手法への展開も期待される。この趣旨説明では、中大型哺乳類を対象とした恐れやストレスに関わる近年の研究動向と基本的な知見について概観する。