| | 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
自由集会 W13-4 (Workshop)
縮小社会への転換に伴い、多くの陸生哺乳類の個体数や分布が回復している。在来哺乳類の回復によって生態系機能の再生が期待される一方、集落周辺での農業被害や人身被害の増加は社会問題となっている。集落周辺を生息地として利用する哺乳類は、ヒトへの恐れが低下している可能性が指摘されているが、直接観察が困難な多くの種に関して知見は不足している。そこで本研究では、陸生哺乳類7種(ツキノワグマ、シカ、イノシシ、サル、タヌキ、アナグマ、ハクビシン)を対象に、ヒトへの対捕食者行動を、遭遇前の行動(時空間重複)と遭遇時の行動という複数の捕食シーケンスにおいて評価した。仮説として、集落周辺ではヒトとの時空間重複が高まり、遭遇時の逃走確率が低下すると予想した。福島県南会津町において、カメラトラップと連動したスピーカーから音声を再生する装置を65箇所に設置し、撮影個体にヒトの声、クマ鈴音、鳥の鳴き声(コントロール音)をランダムに再生した。各種ごとに、目的変数を1週間の撮影回数(空間重複)、撮影時刻(時間重複)、音声再生時の逃走の有無(遭遇時の行動)、説明変数を集落からの距離とするGLMMを構築した。その結果、イノシシ、サルは集落から近い場所で撮影頻度が高かった。クマ、サル以外の種は夜間の活動確率が80%を超え、クマは集落から近いほど夜間の活動確率が高まった。すべての種でヒトの声への逃走確率はコントロール音より高く、集落からの距離による変化は認められなかった。よって仮説は棄却され、すべての種はヒトを恐れていること、ヒトと遭遇時の行動は集落からの距離により変化しないことが示唆された。集落周辺に分布する種の多くは、ヒトとの遭遇を時間的に回避することで、農作物などを利用している可能性が示唆された。以上より、対象哺乳類のヒトへの対捕食者行動は、捕食シーケンスの各段階で独立している可能性が示唆された。