| | 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
自由集会 W14-1 (Workshop)
広島県の瀬戸内海に位置する大久野島には、アナウサギ(Oryctolagus cuniculus)が数百匹生息し、「ウサギの島」として人気の観光地となっている。外来種であるウサギが島で野生化し繁殖している経緯については、実験動物だったウサギが逃げ出した説や1970年代に導入され、それらの個体が増えたという話が流布されている。大久野島では、一度家畜化されたウサギが再野生化していることに加え、観光客による餌付けが行われているなど、一般的なアナウサギの野外における生息状況とはさまざまな点で明確に異なる。そこで本研究では、このような環境下に生息する大久野島のアナウサギの遺伝的な現状を明らかにすることを目的とし、マイクロサテライトマーカーを用いた集団遺伝解析を行った。
島内全体から採集した268の糞便サンプルで、マイクロサテライトマーカー8遺伝子座について解析し、93サンプルではすべての遺伝子座で遺伝子型が得られた。その結果、先行研究で示されている多くの品種のヘテロ接合度よりも高い値を示した。孤立した集団内で交配が繰り返される場合、ヘテロ接合度は次第に低下することが知られているものの、大久野島のアナウサギ集団においては、その傾向は見られなかった。この結果は、大久野島のアナウサギ集団における新たな対立遺伝子の継続的な加入を意味し、1970年代の導入後も継続的な個体の遺棄があったことが示唆された。また、STRUCTURE解析およびNeighbor-Net networkからは、非常に弱い分集団構造の存在が示唆されるとともに、その構造は時間的スケールによって変化する可能性も示唆された。以上の結果から、大久野島のアナウサギ集団では、特異的な環境下において独自の集団構造が成立していると考えられる。