| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


自由集会 W14-2  (Workshop)

人為導入された捕食者と自然分散によって変化する海洋島の鳥類群集構造
Changes in avifauna on oceanic islands driven by introduced predators and natural dispersal

*飯島大智(筑波大学), 安藤温子(国立環境研究所), 井上遠(伊豆諸島鳥類研究GR), 村上正志(千葉大学), 伊藤舜(静岡大学), 福田真平(東邦大学), 佐藤望(伊豆諸島鳥類研究GR)
*Daichi IIJIMA(Univ. Tsukuba), Haruko ANDO(NIES), Tohki INOUE(Izu ORG), Masashi MURAKAMI(Chiba Univ.), Shun ITO(Shizuoka Univ.), Shinpei FUKUDA(Toho Univ.), Nozomu J SATO(Izu ORG)

海洋島の生態系は人間活動に対して非常に脆弱である。本土近傍の海洋島は、海上分散を介した本土由来種の自然定着を含む生物群集構造の変化を駆動するメカニズムを検証するのに適したモデル系である。多くの先行研究が、海洋島の生物群集の変化に対する人為的要因(捕食者導入や土地利用改変)の影響に着目してきた一方で、これらの要因と本土からの自然な生物の移入の影響を同時に考慮した実証研究は乏しい。本研究では、伊豆諸島10島における2016年から2021年にかけての鳥類群集の調査を、1970年から1973年にかけての記録と比較することで、これを実証した。伊豆諸島における各鳥類種の分布の変化に対する本土における分布の変化や形質の影響を系統一般化最小二乗法で解析した。さらに、島ごとの鳥類の種数、機能的・系統的群集構造の変化を、島の地理的な特性、ニホンイタチの人為導入の有無、人為的な土地利用改変の強度により説明する線形モデルを検証した。本土で分布を拡大した種ならびに一腹卵数が小さい種は多くの島へ定着した。種数は8島で減少し、機能的群集構造は9島で、系統的群集構造は8島でクラスター化したが、この変化は主に地理的な特性により説明された。一方、猛禽類が多くの島で消失したことが明らかになった。以上の結果は、伊豆諸島の島々は本土で分布を拡大した種の定着を受けているものの、種数や機能・系統的多様性が群島全体で低下していることを示している。先行研究が示すように、人為的に導入されたニホンイタチは、導入先の島で昆虫や爬虫類の個体数に強い負の影響を与え、さらに鳥類を直接捕食する。鳥類は島間移動を行うため、特定の島における昆虫や爬虫類といった餌生物群集の劣化の負の効果が隣接する島の鳥類群集へも波及した可能性がある。それゆえ、群島の生物多様性を効果的に保全するためには、単一の島だけではなく群島全体を対象とした包括的な保全戦略が必要である。


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