| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


自由集会 W15-3  (Workshop)

湧水性生物に対する土地利用および気候の影響評価
Effects of land use and climate on the distribution of groundwater-dependent species

*平野佑奈, 今藤夏子, 伊藤洋, 西廣淳(国立環境研究所)
*Yuna HIRANO, Natsuko KONDO, Hiroshi ITO, Jun NISHIHIRO(NIES)

 地下水によって涵養される湧水湿地は、水量や水温が安定した環境を提供し、湧水性動物(湧水周辺を選好する動物)にとって重要な生息地である。しかし、近年の気候および土地利用の変化は地下水循環に影響を及ぼし、湧水性動物の生息環境に深刻な影響を与えている可能性がある。将来気候への適応策を検討するためには、気候および土地利用が地下水循環を介して湧水性動物に及ぼす影響を定量的に評価することが不可欠である。本研究では、地下水循環の指標種としてホトケドジョウ(魚類)に注目し、気候、土地利用、地形などの景観要因がその分布に与える影響を評価した。関東地方の117地点の一次谷において環境DNAを用いて分布情報を取得し、多重共線性に頑健で予測モデリングに適した手法であるElastic Netを用いた統計解析を行った。
 その結果、ホトケドジョウの分布は、最小降水量や地形湿潤指数など、湧水の供給や持続性を反映する変数の影響を受けることが示唆された。また、夏季気温と集水域における雨水浸透量の交互作用の効果が認められ、雨水浸透ポテンシャルの高い集水域では、高気温条件下でも生息確率が高いことが示唆された。さらに将来気候シナリオでは、多くの地点で生息確率の低下が予測された一方、雨水浸透の促進を仮定した場合には、その影響が部分的に緩和される可能性が示された。本研究は、集水域スケールでの雨水浸透の維持・促進が、湧水性動物の保全および気候変動への適応策として効果をもつことを示している。


日本生態学会