| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


自由集会 W15-4  (Workshop)

沿岸域の水・物質循環における地下水湧出の役割
The role of groundwater discharge in water and material cycling in coastal seas

*中島壽視(東京大大気海洋研)
*Toshimi NAKAJIMA(UTokyo, AORI)

 陸域に降り注いだ降水の一部は、主に2つの経路で海へ流出する。一つは河川水として地表を流下する経路であり、もう一つは地下水として海域へ直接流出する経路である。これらは陸側から見ると淡水の流出であるが、海側からは淡水や物質(栄養塩・炭素・重金属等)の流入である。特に、海底から湧出する地下水は、安定した温度条件や物質供給などを通じて沿岸域生態系の維持に寄与していると考えられる。河川水に対して視覚的に把握が困難な地下水の研究はこれまで十分になされてこなかったが、近年その重要性は明らかとなりつつある。
 海底からの湧出現象(海底湧水または海底地下水湧出)は、後背地の地形勾配や堆積物の透水性、地質構造によってその形態や湧出量が異なる。また、地下水には、陸域の降水を起源とする淡水成分の地下水(淡水性地下水)に加え、海水を起源とする塩水成分の地下水(再循環性地下水)も含まれる。これらの異なる特性を有する地下水が、様々な外力(陸海間の水位勾配、潮汐・波浪による海面変動、淡水と海水の密度差など)によって海底から湧出している。物質循環の観点では、海洋へ流入する地下水およびそれに伴う物質輸送量は、世界各地の沿岸域で河川水と同等またはそれより上回る結果が報告されており、生態系における主要な物質供給源としての役割が明らかとなってきている。本発表は、海洋における湧水現象の定義に加えて、地下水による水・物質供給、および生態系への影響に関する研究事例について説明する予定としている。


日本生態学会