| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


自由集会 W16-5  (Workshop)

NbSによる創造的復興のすがた「能登のグリーンインフラ復興を考える研究会」
Creative Reconstruction through Nature-based Solutions: “Noto Green Infrastructure Recovery Initiative"

*上野裕介(石川県立大学)
*Yusuke UENO(Ishikawa Prefectural Univ.)

2024年の能登半島地震と奥能登豪雨の2つの激甚災害は、能登の里山里海の生態系と暮らしに甚大な被害をもたらした。世界農業遺産(GIAHS)に認定された能登半島の復興を考える上で、里山里海の自然資本と文化的景観を将来世代へ継承し、地域の再生力を高める基盤として活用する視点が不可欠である。一方で発災後の災害復旧が急がれる局面では、従来型の原形復旧が優先される。このため、復興の意思決定と将来計画に「生態系を活用した防災・減災(Eco-DRR)」や「自然を活用した社会課題の解決策(NbS)」など、“自然を社会基盤として活用するグリーンインフラ(GI)の考え方”を組み込む仕組みは十分ではなく、結果的に生物多様性・自然資本の変化把握や維持方策の検討も後回しになりがちである。
本講演では、産学官民(金)の有志で立ち上げた「能登のグリーンインフラ復興を考える研究会」(2025年2月に50名超で始動、現在80名超)の取組みを紹介する。石川県内外の大学・研究所、行政、企業(ゼネコン、建設・経営コンサル、金融)、NPOの有志や地域の担い手が集い、分野横断型の3つのチームで活動を開始した。チームは、①現場に入り地域とともに課題の発見と解決に取り組む「アクションリサーチ型」、②全国の専門家・企業等の知見や技術を遠隔で結集し「分析・提案・地域還元を行う後方支援型」、③現地視察と勉強会で実践知を共有し、人材育成へつなぐ「学びの場」という三位一体の運営にある。そしてこれらの基盤には、生態学者としての里山里海の生物モニタリングの蓄積と、トキの野生復帰を復興の象徴として位置づける地域の取組みがある。
災害復興において、生態学者はどのような役割を果たすことができるのか?能登で進むEco-DRR/NbSと生物多様性保全の同時達成を目指す有志ネットワークによる“創造的復興”の実践事例を通じ、調査公害を避けつつ成果を地域に迅速に還元する道筋を議論したい。


日本生態学会