| | 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
自由集会 W17-2 (Workshop)
動物の移動行動を正確に理解することは、個体群の保全や様々な生態学的プロセスの解明において不可欠である。とりわけ動物の環境選好性を評価することは主要なトピックであり、追跡データから得られる単位時間あたりの移動距離を様々な環境で推定することで評価が行われてきた。しかし、現在最も広く使われている生息地選好性の分析手法であるIntegrated step selection analysis (iSSA : Avgar et al. 2016)では、単位時間あたりの移動距離を過小評価するという問題がある。これは、連続する位置情報間の利用地点が欠測しているのにも関わらず、その間の経路が単一の直線経路であると仮定していることに起因する。そこで本研究では、欠測統計の手法である多重代入法をiSSAに応用することで、単位時間あたりの移動距離をより正確に推定することを目指した。シミュレーション実験の結果、提案手法はすべてのシナリオにおいて、iSSAよりも高い精度で単位時間あたりの移動距離を推定できることが示された。本研究により、欠測統計手法をiSSAに組み込むことで、環境選好性評価の基盤となる移動距離の推定精度が向上することが明らかとなった。提案手法は、iSSAの長所である簡便性や解釈のしやすさを残したまま、測位点間の移動が直線とならないような時間解像度が低いデータの場合も、移動距離をより正確に推定できる分析手法であり、保全分野を中心に幅広い活用が期待される。