| | 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
自由集会 W18-1 (Workshop)
地球温暖化対策は喫緊の課題であり,土壌の炭素(C)蓄積効果が世界的に注目されている.日本の国土面積の約3割を占める黒ボク土は,特に土壌炭素(SOC)蓄積量が多い土壌型である.その生成には,火山灰や風成塵の供給に加え,草本植生由来の有機物供給が必要であると考えられている(山根, 1973;井上ら, 2001).一方で,生活様式や経済活動の変化に伴い,草原の森林化や,森林の再草原化といった人為的な土地利用変化が行われている(井上, 2021).しかし,草原の土地利用変化が土壌への炭素供給量やSOC蓄積量に与える影響についての知見は少ない.本研究では,古草原の植生変化に伴う草本地下部C量およびSOC蓄積量の変化を明らかにする.
調査地点は,長野県菅平高原および峰の原高原のスキー場周辺の3地点であり,それぞれ100年以上維持されてきた古草原,そこが植林または管理放棄後約50年経過した森林,森林が再草原化されて約50年経過した新草原の3植生タイプについて,土壌断面調査,および草本植物根量調査を行い,そのC濃度から草本地下部C量およびSOC蓄積量を評価した .
その結果,草本地下部C量は各地点で有意な差は認められなかった.これは,森林化に伴い下層植生がササに変化したものの,その根量が草原と同等であったためと考えられた.0~10 cm深における積算SOC蓄積量は,古草原>新草原>森林の順に多い傾向であり,古草原は森林よりも有意に高い値を示した.一方,0~30 cm深における積算SOC蓄積量は,各地点で有意な差は認められなかった.これらの結果から,森林化に伴い草本由来のC供給量が減少しない場合であっても,C分解量が増加することによりSOC蓄積量が減少したと考えられた.以上より,歴史の古い草原が森林化することは,SOC蓄積機能の低下につながることが示唆された.