| | 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
自由集会 W18-2 (Workshop)
水田は人間活動によって形成・維持される生態系であり、畦畔では定期的な草刈りなどにより生物多様性の高い半自然草原が維持されてきた。しかし近年、耕作放棄の増加や農業の集約化により、畦畔草原の生物多様性は急速に失われつつある。スキー場やため池堰堤の半自然草原では、草原の維持期間が長いほど生物多様性が高いことが知られている。また、放牧地の半自然草原では、維持期間が長いほど放牧依存の種数が増加することが報告されている。そのため、水田においても長期間管理が継続された畦畔では、生物多様性が高く、草刈りに依存する種が多くなると予想される。一方で、水田畦畔の生物多様性は、石垣や土といった畦畔の母材の違いに加え、管理者ごとの管理手法(草刈り頻度)の多様性にも影響を受ける可能性があり、草原の継続年数とともに、これらの要因の多様性への影響を考えることが必要である。
本研究では、長野県東部を中心とする水田40地点を対象とした。2025年7月から10月にかけて、各地点で植生調査およびチョウ目相の調査を1回ずつ実施し、母材の記述とともに、土壌環境(水分量・pH)を測定した。さらに、聞き取り調査により管理手法を把握し、航空写真および文献資料を用いて管理継続年数を推定した。これらのデータを統合的に解析し、管理継続年数および畦畔の母材・草刈り頻度などの水田畦畔の生物群集に与える影響を明らかにすることを目的とした。本発表では、生物群集を規定する要因について歴史性・環境条件・管理手法の複合的な視点から考察を行う。