| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


自由集会 W18-4  (Workshop)

半自然草原における植物と微生物の共生関係の固有性
The uniqueness of plant–microbe symbiotic relationships in semi-natural grasslands

*野口幹仁(京都大学), 冨髙まほろ(筑波大学・山岳セ), 朝田愛理(神戸大学, 神戸市役所), 井上太貴(筑波大学・山岳セ, サンリット(株)), 鈴木暁久(筑波大学・山岳セ, 農林水産省), 土井結渚(筑波大学・山岳セ, 環境省), 滝澤一水(筑波大学・山岳セ, 株式会社アイティテラ), 寺嶋悠人(筑波大学・山岳セ), 市野祥子(筑波大学・山岳セ), 入江瑞生(筑波大学・山岳セ), 嶋崎桂(筑波大学・山岳セ, 伊那食品工業(株)), 平山楽(神戸大学), 黒川紘子(京都大学), 丑丸敦史(神戸大学), 東樹宏和(京都大学), 田中健太(筑波大学・山岳セ)
*Mikihito NOGUCHI(Kyoto Univ.), Mahoro TOMITAKA(University of Tsukuba), Airi ASADA(Kobe Univ., Kobe City Hall), Taiki INOUE(University of Tsukuba, Sunlit Seedlings Ltd.), Akihisa SUZUKI(University of Tsukuba, MAFF), Yuina DOI(University of Tsukuba, Ministry of the Environment), Issui TAKIZAWA(University of Tsukuba, IT-Tera Co., Ltd.), Yuto TERASHIMA(University of Tsukuba), Sachiko ICHINO(University of Tsukuba), Mizuki IRIE(University of Tsukuba), Kei SHIMAZAKI(University of Tsukuba, Ina Food Industry Co., Ltd.), Gaku S HIRAYAMA(Kobe Univ.), Hiroko KUROKAWA(Kyoto Univ.), Atushi USHIMARU(Kobe Univ.), Hirokazu TOJU(Kyoto Univ.), Tanaka KENTA(University of Tsukuba)

植物は、真菌や細菌をはじめとする微生物と共生関係を築くことで、生態系機能の基盤を支えている。古くから人間の営みによって維持されてきた半自然草原においては、草原性在来種を含む多様な植物が、複雑に形成された微生物叢と相互作用していると考えられる。実際、植物と相利共生するアーバスキュラー菌根菌では、300年以上継続する古い草原において高い多様性が報告されている。しかしながら、半自然草原という生態系全体に内在する微生物叢の全体像は、いまだ十分に解明されていない。
そこで本研究では、長野県菅平高原および峰の原高原において、300年以上継続している古草原、30~70年継続している新草原、ならびに草原が森林化した二次林という3つの植生タイプ、計42地点を対象とした。各地点で植物の葉および根を採取し、計215植物種・1041サンプルについて、真菌および細菌を対象としたDNAバーコーディング解析を実施した。
得られた微生物叢構造を植生タイプ間で比較したところ、とくに草原性植物を多く含む系統群(バラ目・キク目・イネ目)において、一貫して有意な差異が認められた。さらに、各微生物分類群に対して種分布モデリングを行った結果、草原の継続期間と強く関連し、古草原に特異的に出現する微生物群が検出された。これらには、複数の病原菌や、アーバスキュラー菌根菌の内部共生細菌など、宿主植物の適応度に影響を及ぼしうる分類群が含まれていた。
以上の結果から、半自然草原のなかでも、とくに300年以上の継続性を有する古草原は、固有性の高い植物共生微生物叢を内包している可能性が示唆された。一方で、本研究で焦点の当たった古草原特異的な微生物の多くは、生態系における機能がほとんど明らかにされていない。今後は、これら特異的な微生物叢およびその構成微生物の生態の理解を深めることで、失われつつある半自然草原の潜在的価値を明らかにしていく必要がある。


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