| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


自由集会 W18-5  (Workshop)

半自然草原の価値をどう伝えるか― 金銭的・労力的支援意志に基づいて ―
Communicating the Value of Semi-natural Grasslands: Evidence from Willingness to Pay and Volunteer Participation

*冨髙まほろ(筑波大学・山岳セ), 五十里翔吾(琉球大学, 株)シンクネイチャー), 大沼あゆみ(慶応義塾大学), 佐々木雄大(横浜国立大学), 田中健太(筑波大学・山岳セ)
*Mahoro TOMITAKA(MSC, Univ. Tsukuba), Shogo IKARI(Univ Ryukyus, Think Nature Inc.), Ayumi ONUMA(Keio University), Takehiro SASAKI(Yokohama National Univ.), Tanaka KENTA(MSC, Univ. Tsukuba)

温暖湿潤な気候に位置する日本では、放牧や茅の採取などの伝統的利用により半自然草原が維持されてきた。しかし生活様式の近代化に伴い利用需要が低下し、植林や管理放棄が進行した結果、草原面積は急減し、草原性動植物の生息地は大きく縮小している。現存する半自然草原の保全は急務であるが、その存続には継続的な人為管理が不可欠であり、保護区指定のような施策だけでは十分に維持できない。担い手不足や高齢化、資金不足が深刻化するなか、従来通りの管理体制で地域内の努力のみで草原を維持することは困難である。したがって、草原の価値と管理の必要性を社会と共有し、地域外も含む広範な支援を得ることが求められる。
近年、半自然草原は多様な草原性動植物の生息地としてだけでなく、土壌炭素貯留、創薬遺伝資源、表層崩壊抑制、観光資源など多様な生態系サービスを提供することが示されている一方、これらの価値は十分に認知されていない。社会的支援を得るためには、草原がもつこれらの価値を科学的根拠に基づいて市民に伝えることが重要である。どのような知見を優先的に伝えるべきか、さらに伝える情報の確実性がどの程度重要かといった、情報提示の指針に関わる科学的知見が不足している。
そこで本研究では、全国の10代〜70代1500人を対象としたオンラインアンケートを実施し、価値情報の提示が管理に対する金銭的支援意志および労力的支援意志に与える影響を調査した。実測値に基づき、草原消失に伴う各価値(生物多様性、希少種、土壌炭素貯留、創薬遺伝資源、観光資源)の損失の程度を推定し、これらを属性として組み込んだコンジョイント分析を実施した。各情報が支援意志に与える相対的な訴求力と、その属性間の差異を検証した。これらの結果をもとに、半自然草原の持続的管理に向けた効果的な科学コミュニケーションについて議論したい。


日本生態学会