| | 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
自由集会 W19-3 (Workshop)
動物の集団行動は多くの研究者を魅了し、それを生み出す個体間相互作用の原理について盛んに研究がなされてきた一方で、その背後にある神経遺伝学的基盤は十分には明らかでない。ショウジョウバエ(Drosophila)は遺伝学や神経科学において古くから重用されてきたモデル生物であり、野外集団に由来する近交系統や遺伝子変異体などの遺伝的リソースが豊富であること、また種々の社会的相互作用も観察されることから、集団行動の神経遺伝学的基盤を探るうえで適した系であると考えられる。本発表では、周囲の他個体の視覚的手がかりが恐怖反応を軽減するという現象に着目して行なった研究を紹介する。我々はこれまで、近交系キイロショウジョウバエを多数用いた大規模行動定量、ゲノムワイド関連解析や候補遺伝子の機能解析、Animal-computer interactionの手法によるバーチャル捕食実験などを組み合わせ、行動の遺伝的基盤から生態学的意義を検証してきた。加えて、個体間の行動多様性が非相加的に集団パフォーマンスの向上に寄与するという多様性効果に着目し、その遺伝的基盤を探る新たなゲノム解析アプローチ(Genome-wide higher-level association study: GHAS)を提案している。さらに本発表では、上記の枠組みを拡張する現在進行中の取り組みとして、オミクス解析の種間運用性を活かした同一実験・解析プロトコルによる種間比較や、情報工学的手法を用いた個体の内部状態推定に基づく実験的介入についても可能な範囲で取り上げる。これらの統合的アプローチに基づき、分子—個体—集団—進化をつなぐ解析設計を共有するとともに、生態学における集団行動研究の新たな枠組みを提案する。