| | 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
自由集会 W20-1 (Workshop)
地域スケールで利用可能な空間明示型シミュレーションモデルの選択肢や応用事例は近年大きく増加している。これにより、地域の生態系で現在起きている現象を説明し、異なる管理手法の効果を比較し、将来の可能性を探査するシナリオ分析を行うこと自体の技術的ハードルは下がってきたと言える。しかし、地域で起きている現象をモデリング可能な形に切り取り、定性的・定量的に記述する過程は依然として困難を伴う。現実空間をどのように要約するのか、どの生態学的メカニズムを詳細に記述し、どこを抽象化するのか、何を評価のエンドポイントとするのかなど、研究者間やステークホルダーと前提を十分に共有できないまま進めると、結果としてブラックボックス化してしまうことがある。地域スケールではモデルを回す前段階での合意形成や前提共有に、想像以上の時間を要することが多いのではないだろうか。特に、モデル側と社会実装側の研究者のあいだ、さらには研究者と地域のステークホルダーのあいだで、問題意識、言葉の定義、時間・空間スケール、評価軸などに関する認識のズレが生じることが多い。こうしたズレが十分に整理されないままモデル化が進むと、モデルの成果が意思決定や実践と接続されないまま終わる可能性がある。本発表では、これまで日本各地で実施してきた森林景観モデルLANDIS-IIを用いた空間明示のシナリオ分析の過程で生じたズレを振り返りつつ、地域に根ざしたモデリングに求められる要件を議論したい。