| | 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
自由集会 W20-5 (Workshop)
本発表では、オオタカ(Accipiter gentilis)を象徴種とした生態系の管理・保全が実践されている「鳥取県立大山オオタカの森」の事例について紹介する。大山オオタカの森はアカマツ人工林であり、亜高木層~低木層にサクラ類やカエデ類、草本層にクロモジ(Lindera umbellata)等が繁茂する階層構造が発達し、アカマツと広葉樹の混交林となっている。元々は1991年にゴルフ場開発のために民間企業によって買収されたが、1995年にオオタカの営巣が確認されたことから、オオタカの主要営巣地の保全と希少な野生動植物が生息する豊かな自然環境の保全を目指し、2001年に鳥取県により取得された人工林である。2004年4月1日には「鳥取県立大山オオタカの森の保全に関する条例」が施行され、近年は2024年2月27日に自然共生サイトに認定されており、現在も管理・保全が行われている。一方で、大山オオタカの森が位置する鳥取県西部の大山北麓は大山マツの産地であり、オオタカや生態系の保全だけではなく、用材林としての持続的利用も目指されていた。そこで、2003、2011、2020年度に、鳥取県の委託により、日本野鳥の会鳥取県支部と鳥取大学による調査が実施され、「オオタカと生態系の保全」と「用材林」の2つの視点から森林管理への提案が行われた。鳥取県はこの提案を受け、アカマツの間伐、亜高木層に達する広葉樹の除伐等に加え、小面積皆伐によるアカマツの天然下種更新による長期的な森林整備を実施している。また、収穫された木材の収益は保全事業に充てられている。モデリングに期待することとして、近年ニホンジカが確認されアカマツ稚樹等の食害が懸念されているため、ニホンジカや気候変動等の様々な影響もふまえた生態系の将来予測が挙げられる。そのようなモデリングの成果が実践の場に提供されることで、将来を見据えた適切な管理・保全につながる可能性があると考える。