| | 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
自由集会 W21-2 (Workshop)
コウモリは高度に発達したソナー機構を有する.コウモリの行動研究は,生物ソナーとしての関心の高さや体サイズの制約もあり,これまで主として小中規模空間を対象として行われてきた.しかし近年,動物装着用データロガーの小型化が進展したことで,彼らの移動生態の全体像を包括的に理解することが可能となりつつある.本研究では,コウモリの採餌行動時のナビゲーション戦略を調べるため,①ハイレゾGPSロガー,および②音響イベントGPSロガーをコウモリに装着して得られた成果について発表する.①では,木などに懸下して飛翔昆虫を探索・捕食するキクガシラコウモリを対象とし,採餌する一晩の位置座標を高頻度に測位した結果,コウモリは森林環境を選好して何度も停滞しながら移動し,時折道路に沿って飛行するパターンを示した.これより,コウモリは部分的に経路追従戦略を用いて移動しながら,獲物となる飛翔昆虫が豊富な森林内を選択的に探索飛行している可能性が示唆された.②では,開けた空間にて飛翔昆虫を捕食するヤマコウモリを対象として,GPS座標と併せて超音波放射タイミングを記録することで,獲物捕食タイミングとその地点を調べた結果,水域にて低高度で留まって捕食行動を多く行った一方で,山間部では高高度(最大約300 m)を移動しながら多くの獲物を捕食していたことが分かった.これより,コウモリは山間部においても獲物を積極的に捕食するために高高度を選択的に飛行している可能性が考えられる.今後は,放射タイミングだけでなく音声信号そのものを位置情報と同時に記録可能な音響GPSロガーを活用し,長距離移動時における超音波からそのセンシング戦術や意思決定の過程について併せて分析することで,コウモリのナビゲーション戦略の更なる理解を目指す.