| | 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
自由集会 W21-3 (Workshop)
鳥類の移動生態は多様である。種ごと、個体ごと、あるいは1羽の個体の中でさえ、時間的・空間的なスケールが異なる様々な移動が観察されてきた。一部の海鳥は、目印のほとんどない外洋を飛行または遊泳して、繁殖地から数百kmも離れた餌場を訪れ、そこから確実に帰巣するナビゲーション能力を持つ。本発表では、海鳥類のこのタイプの移動(餌場からの帰巣)を例に、「鳥たちはなぜ迷わず目的地に辿り着けるのか」を議論したい。これまでの私たちの研究では、「何ができるか」だけでなく、「何ができないか」という制約からも移動パターンの実態が見えてきた。したがって、上述の問いに対して私は、「迷わないで済むルートとタイミングの組み合わせを選んでいるから」だと考えている。「何ができないか」という制約の輪郭を探る上では、放鳥実験が有効な手法の一つとなっている。放鳥実験では、鳥の背部に小型のGPSロガーを装着し、レース鳩のように巣から離れた場所へと運んで放す。放鳥地点の選択や放鳥時の感覚遮蔽を組み合わせて人為的に条件を変えた上で、放鳥後の行動を記録することによって、鳥たちが環境をどのように捉えて移動を達成しているかをあぶり出そうという試みがなされてきた。発表では、複数の海鳥種における放鳥実験の結果を参照しながら、これまでに明らかになった外洋性海鳥のナビゲーション能力について考察する。さらに今後の展望として、「ルートとタイミングの選択」と密接な関係にあると考えられる身体的な特徴(翼、脳、感覚器など)を、移動経路と合わせて比較することによって、移動の時空間パターンに多様性が生じるメカニズムにアプローチする計画を紹介したい。