| | 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
自由集会 W23-1 (Workshop)
石狩浜海浜植物群落は、北海道石狩湾沿岸の約25 kmにわたり断続的に広がる日本有数規模の海浜植生である。しかし、近年は、海岸侵食や過剰な利用による植生の破壊に加えて、海岸砂丘の安定化による植生の内陸化が急速に進み問題になっている。我々は、石狩浜の海浜植生再生を目的として、2020年に劣化植生を表土ごと掘り取る野外試験を開始し、その後の植生再生過程をモニタリングしている。さらに、主要な海浜植物について、実生更新の過程や、クローン構造などの調査を実施してきた。その結果、海浜植物の種ごとに、初期の再生速度、実生更新とクローン拡大のバランス、生物間相互作用などが異なることが分かってきた。例えば、ハマヒルガオ(ヒルガオ科ヒルガオ属)は、埋土種子が広く分布しており、砂の露出した裸地で実生による世代更新が頻繁に起きている。そして、実生定着後は、クローンにより最大約30 mまで拡大することが明らかになった。一方で、テンキグサ(イネ科テンキグサ属)は、稔性のある種子が生産されるものの野外で実生は全く見つからず、1 kmを超える巨大なクローン個体が検出された。したがって、種子繁殖はごく稀にしか成功せず、地下茎の伸長に依存して個体群を拡大していると考えられた。また、ハマナス(バラ科バラ属)も実生は稀であり、哺乳類(ネズミ類、エゾユキウサギ、エゾシカ)による果実や種子の食害率が高いことがその一因として示唆された。しかし、一部の採食された種子は破壊されずに発芽可能な状態で排泄されることで、哺乳類が種子散布者として機能しうることも明らかになった。以上のように、海浜環境に適応し同所的に分布している海浜植物であっても、種ごとに個体群の維持や再生のされ方は大きく異なっており、海浜植物群落の遷移や成帯構造の形成に影響を与えている。