| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


自由集会 W23-2  (Workshop)

クローン植物ハマエンドウの種子繁殖-種子はめったに新たなパッチ形成に貢献しない-
Seed propagation of the clonal plant, Lathyrus japonicus: Seeds rarely contribute to patch formation

*西川洋子, 綱本良啓, 島村崇志(道総研)
*Yoko NISHIKAWA, Yoshihiro TSUNAMOTO, Takashi SHIMAMURA(Hokkaido Res. Org.)

ハマエンドウは、多くの海浜植物と同様クローナル植物であり、厳しい環境条件のもとで、地下茎によって個体群を維持、拡大するとともに、実生の定着によって新たなパッチを形成すると考えられる。ハマエンドウの種子繁殖によるパッチ形成メカニズムを解明することを目的として、北海道石狩浜で種子生産~実生定着に至るプロセスについて調査を行っている。石狩浜ではハマエンドウの開花シーズンが年2回あり、7月と10月に結実する。7月に結実した種子は、90%以上がクロマメゾウムシの幼虫の食害を受け、それらの発芽率は10%以下であった。しかし、食害種子のうち4%程度は寄生蜂により子葉の摂食が抑えられたことで、発芽率が高まった。一方、10月に結実した種子は、食害率が16%と低く、無傷のものが多かった。硬実種子であるハマエンドウの種子は、クロマメゾウムシによる穿孔も含め種皮に傷がつかなければ吸水が開始されず、発芽できない。そこで、食害率が大きく異なる結実時期の違いに着目して、散布された種子の生存状況と風による移動距離、実生の分布と生存状況の調査を行った。7月にハマエンドウのパッチ内に自然散布された種子の多くは8月までに破壊され、残された種子の殆どは無傷で、実生は確認されなかった。7月に採取した種子を秋に地表に置き、越冬後に観察すると、種子は地表から5㎝の深さまで分布しており、水平移動距離は30cm以下と短かったが、砂丘最先端の風衝地では長距離移動の可能性も考えられた。実生は春にハマエンドウのパッチ周辺の砂が露出した場所で多く確認されたが、8月までに全て枯死した。ハマエンドウは食害率の高い7月種子の発芽率はきわめて低いと考えられ、10月種子は地表近くにシードバンクを形成し、種皮が傷ついた一部は翌春発芽するものの、実生が生存できないことから、通常年はパッチが形成される可能性は低いと考えられる。


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