| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


自由集会 W23-3  (Workshop)

スナビキソウの分布に砂浜の衰退が与える影響
Impact of sand beach decline on the distribution of Heliotropium japonicum

*石崎智美, 近藤崇史, 林清宇, 高橋直紀, 岩田梓, 小宮山佳奈(新潟大学)
*Satomi ISHIZAKI, Takahumi KONDOU, Seiu RIN, Naoki TAKAHASHI, Azusa IWATA, Kana KOMIYAMA(Niigata Univ.)

近年、砂浜は浸食や地盤沈下によって面積が減少し、多くの場所で護岸工事が行われている。このような砂浜海岸の減少や人工化は、生息地の減少・消失や地形の連続性の分断をもたらし、海浜生物の生息を脅かしている。スナビキソウは、海浜性の多年生草本であり、最も海側に出現する植物の一つである。近年スナビキソウは減少傾向にあり、多くの府県のレッドリストに絶滅種、絶滅危惧種あるいは準絶滅危惧種として掲載されている。スナビキソウが出現する砂浜の特徴を調べたところ、緩やかな傾斜がある砂浜の中で、標高が上がる直前(砂丘の麓)の地点に多く出現していた。さらに、現地調査を行いスナビキソウの生育密度を求め、各地点の過去と現在の航空写真を比較して砂浜面積の増減率を求めたところ、過去50年間で砂浜が減少している地点ではスナビキソウの生育密度が低かった。また、スナビキソウは地下茎を長く伸ばすことでクローン成長を行うが、我々の調査では、自家不和合性を持つことも明らかになっている。そして、生育密度が低い地点では結果率も減少していた。したがって、スナビキソウの大規模な集団が維持されるには、恒常的に砂が供給され、広く安定した砂浜が不可欠である。一方で、スナビキソウの果実は内部にコルク層をもち、海流散布されることで砂浜間を移動している。そして、広い範囲において、遺伝的に類似性の高い個体が分布していることが明らかになった。すなわち、スナビキソウの集団は、大規模な砂浜の集団をソースとして、小規模な砂浜に侵入を繰り返すことで維持されており、大規模集団からの供給が途絶えると分布は衰退すると懸念される。


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