| | 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
自由集会 W29-1 (Workshop)
環境変動に対して生物集団が迅速に適応進化することで絶滅を回避する「進化的救助」は、保全・管理の観点からも重要性が高まってきている。進化的救助の文脈では、環境変化が遅く、集団の個体数が多いほど、適応による絶滅の回避が起きやすいと考えられてきた。しかし先行研究では、形質平均の変化に注目することが多く、形質のばらつき(形質分散)の適応的な変化はほとんど考慮されてこなかった。そこで本研究では、正規分布する量的形質を仮定し、環境の最適値と形質平均が近いと安定化選択により形質分散が減少するが、遠いと形質分散が増加する量的遺伝モデルを用いて、環境の変化速度と進化的救助の関係を調べた。その結果、環境変化が極端に遅い場合、安定化選択が強く働き、形質分散が小さくなるために、さらなる環境変化への適応進化を遅らせて、絶滅を引き起こしうることを見出した。そのため、環境変化の速度が中程度で進化的救助がもっとも起こりやすくなる可能性があると予測される。この予測を検証するため、淡水性単細胞緑藻クロレラChlorella vulgarisを用いた培養実験を行っている。まず、淡水培地(0 M NaCl)から3か月かけて致死的な塩分濃度(0.6 M NaCl)まで徐々に増加させた場合、塩分への適応による進化的救助が起こることがわかった(Shibasaki & Yamamichi 2024 bioRxiv)。次に、淡水培地からいきなり塩分濃度を増加させて0.6 M NaClにした場合、初期個体群サイズによらず個体群が絶滅することを明らかにした。以上の結果を踏まえ、現在、淡水培地から致死的な塩分濃度(0.6M NaCl)まで増加させる速度を中程度にした場合の塩分濃度の上昇間隔と上昇幅がもたらす効果を調べるため、実験を行っている。本発表では実験経過について報告するとともに、理論と実験を組み合わせたアプローチについても議論したい。