| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


自由集会 W29-2  (Workshop)

塩分ストレス下における淡水性プランクトンの捕食者ー被食者動態
Predator-prey dynamics of the freshwater planktons under salinity stress

*柴﨑祥太(同志社大学, 国立遺伝学研究所), 山道真人(国立遺伝学研究所)
*Shota SHIBASAKI(Doshisha Univ., National Institute of Genetics), Masato YAMAMICHI(National Institute of Genetics)

人間活動は多くの生物に悪影響を及ぼしていることが知られている。淡水域では、塩濃度の上昇によって淡水性プランクトンの出生率低下や死亡率上昇が先行研究で報告されている。こうした影響は個体群に直接作用するだけでなく、種間相互作用を変化させることで間接的にも現れる可能性がある。例えば、淡水性緑藻であるクラミドモナスは、捕食者(ツボワムシなどの動物プランクトン)に対する防御として多細胞からなる凝集体を形成するが、塩分ストレス下でも凝集体を形成する。これを踏まえると、塩分ストレス下では緑藻の凝集体の形成が促進され、捕食者は、塩分による死亡率上昇と、凝集体形成による捕食速度低下という二重の悪影響を受けると予想される。そこで本研究では、緑藻とワムシからなる被食者―捕食者系において、塩分ストレスが個体群動態に与える影響を評価した。まず、クロレラ (Chlorella vulgaris) とクラミドモナス(Chlamydomonas sphaeroides ) の2 種類の淡水性緑藻を、塩分(0.06M NaCl)を加えた培地と加えていない培地で単独培養した。その結果、塩分ストレス下でクロレラはほとんど凝集体を形成しないが、クラミドモナスは10 細胞以上からなる凝集体を形成することがわかった。次に、クラミドモナスとツボワムシ (Brachionus calyciflorus) を、塩分を加えた培地と加えていない培地で一週間共培養した。これらの個体群動態の時系列データに対し、Lotka-Volterra モデルを当てはめてパラメータの値をベイズ推定した。ツボワムシの死亡率は塩分ストレス下では10倍以上に昇する一方で、クラミドモナスに対する捕食圧はおよそ半分に度低下していた。このことから、塩水化は捕食者に直接的かつ間接的に悪影響を及ぼしうることが明らかになった。


日本生態学会