| | 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
自由集会 W30-1 (Workshop)
都市化にともなう劇的な環境変化は生物の進化に大きな影響を及ぼす。しかし、都市環境の進化的影響の実態についてはまだ多くが不明である。これは、都市進化の研究のほとんどが二分的な比較(都市 vs 郊外)やトランセクト調査によるアプローチ(以下、従来アプローチ)が主流であり、大きく以下の3つの点が解明されていないからである。
(1)多くの環境要素が都市勾配に沿って変化する一方で、その変動様式は非線形的・不連続的である。したがって、従来アプローチでは都市化によるどの因子が進化を駆動するのか不明である。
(2)従来アプローチは都市から郊外にかけての環境変異(ミクロ変異)にもっぱら着目しており、気候の違いなどのマクロな環境変異(マクロ変異)の進化的影響を見過ごしている。
(3)従来アプローチによって都市-郊外の形質トレンドは明らかになるが、都市環境と郊外環境で自然選択が実際にどのように異なるのかを検証できていない。
本研究は、都市化による環境変異が形質進化に及ぼす影響について、1)様々な環境要素と形質の空間変異の、都市〜郊外の地域一帯における空間分布を明らかにする景観アプローチ、2)気候の異なる複数の都市を用いたマルチスケール・アプローチ、3)相互移植実験による自然選択の実証を行う実証アプローチを統合した視座から明らかにすること目的とした。
1)と2)について、札幌市や函館市、旭川市、釧路市の各所個体群からシロツメクサを定量採取し、都市〜郊外にかけてのシアン産生能と構成因子の有無の空間変異を調べた。主に被食圧がシアン産生能、人工地表面率がシアン配糖体生成の集団内頻度に影響した。また、ミクロ変異の進化的影響の大きさはマクロ変異に匹敵しうることが分かった。3)について、郊外部では負の頻度依存選択が働くが、都市部では負の頻度依存選択の基盤となる植物間相互作用が変化し、多型が失われることが分かった。