| | 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
自由集会 W30-2 (Workshop)
外来植物は侵略地で優占する一方で、原生地では過度に繁茂しないことが多い。このような個体群動態の違いは、土壌微生物群集によって駆動される「植物−土壌フィードバック(PSF)」によって説明されることがある。しかし、土壌微生物群集を変化させ、PSFの強さや方向を制御する因子については十分に理解されていない。その1つとして注目されているのが、二次代謝産物である。植物二次代謝産物は構造的に多様であり、植物は根から二次代謝産物を滲出することで、根圏の微生物群集を選択的に変化させることが近年分かっている。本発表では外来植物であるマンリョウが根に蓄積するトリテルペノイドサポニンと根圏微生物群集に着目した研究を紹介し、二次代謝産物が持つ生態学的な波及効果について議論する。
始めに、日本に自生するマンリョウの実生と成木における根と根圏におけるサポニン含有量を調べ、根圏にサポニンが蓄積していることを確認した。次に土壌への代謝物添加法を用いて、サポニン添加が微生物群集構造に及ぼす効果を評価した。さらにマンリョウ根圏の微生物群集データとサポニン処理実験の結果を統合することにより、サポニンが自然生態系において根圏微生物に与える影響を評価した。最後に、サポニン添加試験を行った土壌をマンリョウ実生に接種することで、サポニンによる微生物群集改変が宿主の生育に影響を及ぼすかどうかを検証した。
結果、マンリョウに由来するサポニンは特定の微生物を選択的に誘引することで根圏微生物群集を改変していることが示された。また、サポニン処理で変化した土壌微生物を接種した個体は、無処理土壌を接種した個体より生存率が高く、サポニン滲出が負のPSFを緩和する可能性が示唆された。以上を踏まえ、化合物駆動の植物−微生物相互作用を個体群動態や侵略過程へ接続する枠組みを議論し、根圏化学−土壌微生物−植物生態学の統合に向けた展望を提示する。