| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


自由集会 W33-3  (Workshop)

メダカ野生集団における繁殖形質の地理的変異と遺伝基盤の探索
Genetic basis and geographic variation of reproductive traits in wild medaka populations

*藤本真悟(琉球大学総合技術部)
*Shingo FUJIMOTO(iTec, Univ. Ryukyus)

魚類では高緯度に分布する種や集団は低緯度のものと比べて、一度の繁殖イベントにおける産卵数が多い傾向を示す。産卵数の地理的変異は、体サイズの増加に応じて産卵数が指数的に増加するサイズ-産卵数関係のアロメトリーの変化をともなうことが多く、サイズ・成長・繁殖など一連の生活史特性の変化をともなう繁殖戦略の適応進化を反映すると考えられてきた。しかしながら、こうした繁殖戦略の種間変異をもたらす遺伝基盤はほとんど未解明なままである。本発表では、日本列島に広く分布するキタノメダカとミナミメダカの2種の野生集団が、繁殖に関する生活史特性の適応進化や遺伝基盤を理解する上で興味深いモデルシステムを提供することを紹介する。緯度の異なる6地点での野外で繁殖する野生個体のサイズ-産卵数関係を評価すると、高緯度地域で得られた野生個体は同じ体サイズでも産卵数が多い傾向を示した。また、青森のキタノメダカと沖縄のミナミメダカの種間交雑F2個体を飼育下で作出して、量的形質遺伝子座(QTL)解析で配偶行動や産卵数などに関連する染色体領域を評価すると、野生集団間での産卵数の変異を説明する効果のあるQTLを23番染色体上に発見した。この遺伝領域には、成長や生殖巣発達に影響するインスリン様成長因子IGF-1、摂餌行動や生殖巣発達のホルモン機能があるレプチンBなどをふくむため、これら遺伝的変異がメダカのサイズ-産卵数関係の表現型に影響している可能性がある。高緯度環境への適応と関連して自然淘汰が働いた遺伝子がQTL領域内にあるか探索するため、さらに、キタノメダカの野生個体で全ゲノムリシーケンス解析を実施して集団ゲノム解析で淘汰の痕跡を示す遺伝領域の特定を進めている。キタノメダカ野生集団では、低水温などで繁殖に適した期間が生理的に短い高緯度環境への適応進化として、一回の繁殖イベントで産卵数を最大化する形質が自然淘汰で好まれたのだろう。


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