| | 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
自由集会 W34-1 (Workshop)
日本では20世紀以降の近代化に伴い、草原や湿地の大部分が失われ、草地性、湿地性鳥類の個体数が著しく減少していると言われる。実際に、近年「国内希少野生動植物種」に指定された鳥類には、アカモズ、シマクイナなど草地・湿地環境に生息する種が複数含まれており、それらの種の保全の緊急性が高いことを示している。草地性、湿地性鳥類の中には、従来の生息環境の代替地として、人里にある農地を生息場所とした種も知られている。例えば、トキやコウノトリをはじめとした水田を利用する鳥類は、一般にもよく知られており、多くの研究と保全の取り組みが積み重ねられてきた。一方で、鳥類に限らずこれまでの農地における生物多様性保全の議論は、水田耕作に関連した農法や周辺景観の維持管理に焦点をあてたものが多く、その他の土地利用が話題に上がることは多くなかった。しかし、近年になってリンゴ果樹園で繁殖するアカモズや、耕作放棄後の水田跡地で越冬するシマクイナなど、営農中の水田以外の農地であっても、希少鳥類の生息地として重要な役割を果たしている事例が報告されている。それらの環境は種の保全上極めて重要であるが、人里に位置するという特性上、現行の施策だけでは対応できない課題も抱えている。本発表では、果樹園でのアカモズ保全の取組みを中心に複数の事例に触れ、その現状と課題を紹介する。