| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


自由集会 W37-2  (Workshop)

植物と植食者の相互作用がもたらす群集スケールの収斂進化:屋久島のミニチュア植物群
Assemblage-level convergent evolution driven by plant–herbivore interactions: a case study of miniaturised plant assemblages on Yakushima Island

*高橋大樹(九州大学), 陶山佳久(東北大学), 福島慶太郎(福島大学), 瀬戸口浩彰(京都大学), 阪口翔太(京都大学)
*Daiki TAKAHASHI(Kyushu Univ.), Yoshihisa SUYAMA(Tohoku Univ.), Keitaro FUKUSHIMA(Fukushima Univ.), Hiroaki SETOGUCHI(Kyoto Univ.), Shota SAKAGUCHI(Kyoto Univ.)

強い環境ストレスがはたらく特殊環境では、系統的に異なる植物が類似した形質や生活史を獲得するという収れん進化の結果、特殊な植物群集が成立することが知られている。特に乾燥や低温の環境ストレスがこうした群集レベルの収れん進化を駆動することは世界中より報告されている。本発表では、群集レベルの収れん進化の事例として、屋久島高標高域に成立する矮小植物群集を紹介する。屋久島では標高約1600m以上の地域において、100種を超える草本植物が近縁種や同種の他地域集団と比較して、植物体サイズや葉長が1/2から1/10程度まで小型化している。この矮小化は、系統的に離れた多数の分類群において繰り返し生じており、群集レベルでの大規模な収れん進化と捉えることができる。この収れん進化を駆動した選択圧を推定するために多分類群を用いた多変量解析を行った結果、草食動物であるヤクシカの嗜好性が植物の矮小化に影響していることが明らかになった。またゲノム解析の結果、ほとんどの矮小型の植物の分岐年代は最終氷期(約2万―11万年前)に集中していた。したがって、屋久島の矮小植物群集は、最終氷期以降の比較的短い時間スケールで、草本植物がヤクシカからの採食を回避するために矮小進化したことで成立したことが示唆された。屋久島の矮小植物群集は、草食動物との相互作用の結果、急速に形成された特殊群集であり、特殊群集が関係する生態系機能や群集内の生物間相互作用を調べる上で恰好の研究対象であると考えられる。


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