| | 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
自由集会 W37-3 (Workshop)
環境勾配に対してどのように種間・種内の形質変異が生じるかを明らかにすることは、進化生態学の主要な課題の一つである。すなわち、環境と形質の空間構造を理解することは、生物の適応を理解する上で最も基本的な枠組みである。一方、種内形質変異は生物間相互作用を変え、個体群動態や群集集合に影響する。したがって、環境勾配と種内形質変異の空間構造とその形成メカニズムの解明は進化群集生態学の重要な課題である。しかし、次の理由によりその解明は進んでいない:1)多様な環境因子の定量化が不十分。地表と地下部における非生物的要素の包括的な不均一性をジオ多様性と呼ぶが、ジオ多様性の定量化はほとんどなされていない。2)連続空間における種内形質変異の分布の実証例は非常に少ない。3)同じ空間スケールで対応した環境勾配と種内形質変異の定量評価の欠如により、その空間構造の形成メカニズムが明らかになっていない。
本研究は、これらの課題を克服し、ジオ多様性構成要素を包括したジオ組成が植物の種内形質変異の空間構造をどのように構築するかを解明することを目的とした。また、ジオ組成が直接的に形質変異を形作るのか、または土壌微生物叢を介して間接的に決定するのかというメカニズムの解明も目的とした。
北海道大学研究林に造成された山腹崩壊を模した実験地を対象とした。LiDAR測量と100点の格子状サンプリングによる土壌特性測定から、ジオ多様性構成要素を定量した。また、その土壌試料を用いて真菌と細菌の群集構造を調べた。そして、同じ格子点の植物個体を対象に機能形質を網羅的に測定した。
その結果、土壌堆積や侵食などジオ多様性構成要素の不均一な空間構造の可視化に成功した。そして、ジオ組成―微生物叢―機能形質群における空間を考慮した包括的定量化とモデリングによって、ジオ組成が植物の種内形質変異とその空間構造を決定するメカニズムが明らかになった。