| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


自由集会 W37-4  (Workshop)

葉脈構造の進化がもたらす広葉樹における気候ニッチのシフトと多様化
Evolution of Leaf venation patterns promotes climate niche shifts and diversification in broadleaf trees

*佐々木陽依, 山尾僚(京都大学)
*Hiyori SASAKI, Akira YAMAWO(Kyoto Univ.)

陸上生態系の基盤を構成する木本被子植物は多様な葉脈構造を示し、種ごとに分化が進んでいる。しかし、個体の生理機能に関与する葉脈構造が木本被子植物の繁栄や多様化に、どのように貢献してきたのかは明らかではない。本研究では、全球に分布する木本被子植物153科753属2369種を対象として、葉脈構造の評価と、広域空間スケールでの気候ニッチとの相関進化、および木本被子植物の種の多様化に対する影響を評価した。
対象種の葉脈構造と分布地の環境情報を、葉脈標本データベースやGBIF、WorldClimなどのオープンデータベースから収集した。葉脈構造は、二次脈のループの状態によって、ツリー型、複合型、ループ型の3タイプに分類した。対象とした種について系統樹をメガツリーから再構築した。葉脈構造と分布地の関係を系統を考慮したPGLSモデルで解析した。加えて、現在の種の葉脈構造と分布地の環境情報をもとに祖先形質推定を行い、モデル比較により両者が相関進化している可能性と、葉脈構造が温帯や熱帯といった分布地の気候ニッチの変化に与える影響を検討した。さらに、系統樹と形質に基づき、多様化率に対する葉脈構造の影響をSSEモデルを用いて評価した。
葉脈構造は降水量や水蒸気圧よりも気温との相関が強く、ツリー型はループ型より寒冷な場所に分布していることが明らかになった。この分布パターンは、寒冷なニッチにおいて、ループ型が複合型を介してツリー型に進化することで生じていた。さらに、複合型の葉脈構造をもつ系統は、異なる気候ニッチへのシフトが生じやすく、種の多様化率も高くなることが示された。本研究から、葉脈構造の進化が、木本被子植物の気候への適応、および多様化に貢献した可能性が示唆された。


日本生態学会