| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


自由集会 W37-5  (Workshop)

収斂的共同進化がもたらす生態系イノベーションと展望
Ecosystem innovations driven by convergent joint evolution

*山尾僚(京都大学)
*Akira YAMAWO(Kyoto Univ.)

白亜紀以降、被子植物の多様化と生態系における優占は、陸上生態系を大きく再編し、現在につながる生態系レジームの成立を導いたと考えられている。本講演では、その再編過程を理解する鍵として、菌根共生様式(アーバスキュラー菌根:AM型、外生菌根:EcM型)の進化に着目して検討する。AM型植物では負の植物-土壌フィードバックが卓越し、個体群は空間的に分散する傾向を示すのに対し、EcM型植物では正のフィードバックを通じて高密度・集団的な分布が形成されやすいことが知られている。世界各地に分布する樹木約1万種を対象とした解析から、菌根共生タイプの違いは、送粉や種子散布様式の進化と密接に関連していることが明らかになった。具体的には、AMと共生する樹種は、送粉・種子散布ともに動物媒を示す種が多く、EcMと共生する樹種は、送粉は風媒、種子散布は重力または風散布を示す種が多いことが明らかになった。これらの共生関係の進化は、森林の空間構造を共同で特徴付けてきたと考えられる。さらに、このような空間構造の違いは、単なる個体群レベルの現象にとどまらず、植物の防御戦略の進化パターンや植食者の食性幅、さらには食物網構造へと連鎖的に波及可能性が考えられる。重要なのは、これらの形質進化や相互作用の変化が、それぞれ独立に進化した結果ではなく、異なる分類群において繰り返し生じた収斂的共同進化として理解できる点である。すなわち、菌根共生様式の進化を起点として、植物-動物-微生物間の相互作用が収斂的に再編成され、その結果として生態系レベルで新たな構造と機能が創出されてきたと解釈できる。本講演では、このような過程を「生態系レジーム再編」として位置づけ、マクロ進化スケールで生じる生態-進化相互作用が、生態系イノベーションを生み出す基盤の一つとなりうることを紹介する。


日本生態学会