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一般講演 B1-05

熱帯樹種ドリアン(Durio zibethinus Murray)の果実成長と果軸断面積との関係

*小川一治(名大・生命農学), A.M. Abdullah, M. Awang (UPM), 古川昭雄(奈良女・共生センター)

熱帯樹種を含む樹木において、その果実の成長や成熟は、果実自身の光合成による貢献もあるが、主として他器官から果実への転流に依存している。従って、果実は光合成産物の転流のためのパイプとみなせうる。

El-Otmani et al. (1993)やBustan et al. (1995)はいくつかの柑橘類において果軸断面積と果実サイズとの間の相関を報告している。これらの研究結果は果実の成長期における輸送限界(transport limitation)の可能性を示している。しかしながら、輸送能力と果実成長の関係はいまだに論争段階にある。いくつかの研究によれば、光合成産物の輸送はシンク強度によって制御されているという報告もある。

本研究では、マレーシア農科大学(現マレーシアプトラ大学、UPM)内の実験林に成育するドリアン(Durio zibethinus Murray)の果実重量成長と果軸断面積との関係について解析した。果実乾重と果実の縦、横方向の直径の積との間には、べき乗式で近似される相対成長関係が成立した。また、果実乾重の成長速度は果軸断面積と直線関係にあることがわかった。この直線関係は単位果軸断面積当たり果実重成長速度で定義される果実の比成長速度が果軸断面積に関係なく一定であること示す。果軸から果実へ移動する光合成産物の転流速度と果実重の成長速度との間に比例関係があるという先行研究の結果(Ogawa et al. 1996)を考慮すれば、果実重の成長速度、転流速度および果軸断面積は互いに比例関係にあることが明らかとなり、このことは果実の成長期においては物質の輸送限界の可能性を示すものと言える。

日本生態学会