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一般講演 B3-05

タイ熱帯季節林における炭素同位体を用いた成長輪の検出

*大橋伸太, 岡田直紀(京都大学農学研究科)

熱帯の樹木は、成長輪が存在しないか、存在しても不明瞭または不規則なものが大半を占めているので、それを解析して樹齢や成長量の情報を得るのは困難である。しかし、雨季と乾季のある熱帯季節林においては木部を構成する炭素の同位体比に周期性がみられると期待される。そこで本研究では、タイ熱帯季節林の樹木について炭素安定同位体比による成長輪の解析を行い、同位体比の周期性と降水量・木部構造などとの関連性を検討した。

試料はタイ国ナコンラチャシマ県サケラート研究ステーションの落葉フタバガキ科4樹種(Shorea obtusa, Shorea siamensis, Dipterocarpus intricatus, Dipterocarpus tuberculatus)と常緑フタバガキ科2樹種(Shorea henryana, Hopea ferrea)で、それぞれ形成層へのマーキングによって期間成長量がわかっている。また、明確な年輪を持つチーク(Tectona grandis)を比較のための試料として加えた。各樹種1個体をそれぞれミクロトームを用いて樹皮側から放射方向に0.1mmごとに(チークのみ0.2mmごと)順次切り出し、脱リグニン処理をして得られたホロセルロースの炭素同位体比を同位体比質量分析計を用いて測定した。

Shorea obtusa以外の樹種はマーキングの成長期間で周期性を示した。Shorea obtusaは同期間での周期性は示さなかったが、他の年では他樹種と同様の周期性を示した。フタバガキ科樹種のいくつかに見られる不明瞭で不規則な成長輪のように見える線と同位体比の周期との間には関連性は見られなかった。フタバガキ科6樹種とチークでは1成長期における同位体比の変化の仕方が異なっていたが、降水量と関連していると考えられる同位体比の変化が全ての樹種に共通して現れていた。

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