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一般講演 B3-06

異なる生育地における海草コアマモに関する比較研究

*矢部徹(国立環境研究所・生物圏),吉田友彦,木村賢史(東海大・海洋),石井裕一(茨城県霞ヶ浦環境科学センター),桑江朝比呂(港湾空港技術研究所・海洋水工部)

【はじめに】 海草コアマモは汽水湖や内湾における砂および砂泥質の干潟に藻場を形成している。藻場は沿岸生態系において重要な役割を果たす場であることが知られているが、近年では埋め立てや環境要因の変化による衰退が指摘されている。本研究では海草コアマモ(Zostera japonica)の藻場を研究対象として、異なる生育地における底質環境と現存量および成長の比較を通じ、それらの関係探索を行った。

【調査地と方法】 春期と夏期に東京湾東岸に位置する砂質干潟である千葉県木更津市の盤洲干潟と千葉県富津市の富津干潟において、干潟内に発達したコアマモ藻場と裸地の底質の有機物含有量、綿布埋設分解試験による有機物分解活性、底質間隙水中の栄養塩、コアマモの地下部および地上部のバイオマス等について比較を行った。春期から夏期にかけての大潮干潮時には両生育地とも日中に干出し、コアマモは長時間の高温や乾燥等にさらされ、葉身の枯死脱落がみられた。

【結果】 盤洲干潟では藻場の有機物分解活性は裸地よりも高く、枯死地下部は夏期に春期の8%まで減少した。いっぽう底質間隙水中DINは春期の47%まで減少した。コアマモの地上部および地下部現存量は日中干出を経たにもかかわらず春期と同程度に維持されていた。またラメット密度は2/3に減少したが最大葉長は増加した。いっぽう富津干潟では藻場の有機物分解活性は裸地と同程度で、枯死地下部は春期の57%までしか減少しなかった。底質間隙水中DINは春期の13倍にまで増加していたが、日中干出を経て地上部現存量、最大葉長ともに減少した。地下部現存量とラメット密度は維持されていた。講演では2つの干潟におけるコアマモの異なった生残戦略について考察する。

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