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一般講演 C1-04

善光寺用水改修に併せたゲンジボタル保護策への一考察について

*甲斐貴光(長野県長野地方事務所)

善光寺用水は長野市の裾花川と犀川を取水源とする用水路であり、犀川左岸の水田面積約989haを潤している。裾花川水系の現在の水路網は昭和9年〜12年に築造された施設のままであり、護岸の洗掘や亀裂により漏水が激しく下流の用水不足が生じている。善光寺平地区の県営かんがい排水事業により安定した用水確保を目指して幹線導水路として改修することになった。現地調査を進めたところ、用水路中にゲンジボタルが生息していることが判明した。そこでゲンジボタルを中心とする自然生態系を把握し、善光寺用水の改修工事による影響や生態系の保護策を立てるため、本報の生態系調査を実施することになった。調査対象の水路延長はL=1,060mであった。この区間でゲンジボタル成虫の発生状況・産卵状況を観測するために日没19時〜夜間22時にかけてラインセンサス法(0.3m/sで歩行)により、調査を実施した。これに加えてカワニナの生息状況、底生動物生息状況の確認も行った。平成16年から平成18年にかけて市街地のホタルを調査し、産卵場所を探索した。またホタル成虫の発生状況、産卵状況結果を長野ホタルの会会長三石暉弥博士とともに確認した。一般的に長野県内でのホタル幼虫の上陸は4月下旬から5月中旬といわれている。当該地域では、幼虫の上陸時期が5月下旬と遅いことがわかった。現地の特異性として裾花川水系では雪解け水がなくなる5月下旬頃に水温が3〜4℃上昇するため、そのころに幼虫の上陸が多くなると考えられた。上陸時には気温が上昇しているため、蛹の期間がされていると思われた。ゲンジボタルの卵塊は一昨年6箇所、昨年8箇所、今年4箇所を確認することができた。そのうち1箇所の卵塊は、25cm四方程度の範囲に2〜3万粒の集団産卵を確認した。現地調査でゲンジボタルとナベブタムシが確認でき、それぞれ長野県レッドデ−タブックの留意種に指定されている。

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