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一般講演 C3-07

外来昆虫と外来植物の相互作用に植生が与える影響

*犬塚直寛,大串隆之(京大・生態学研究センター)

外来昆虫の侵入・定着過程において、捕食者や競争者などの生物的要因が大きく影響することが知られているが、侵入後の個体群密度に影響を与える要因に関してはまだ十分に解明されていない。1996年に日本への侵入が初めて確認された、北米原産の外来昆虫であるブタクサハムシ(Ophraella communa Lesage)は、寄主植物であるブタクサ(Ambrosia artemisiifolia L.)上でしばしば高密度に達し、ブタクサの葉を食い尽くす。しかし、寄主の食い尽くしが起こらないこともある。植食性昆虫の密度は植物の空間分布、寄主植物の資源量と質、天敵の存在によって影響を受ける。さらに、それらの要因に対して周囲の非寄主植物が間接的に影響を与える。

本研究は、非寄主植物の存在が外来昆虫のブタクサハムシの密度に与える影響を野外実験により評価した。特に、非寄主植物がブタクサハムシ密度に影響を与えるメカニズムとして、(1)天敵を介した間接的影響、(2)寄主植物の高さや質の変化を介した間接的影響、(3)ブタクサハムシの移入・移出の変化に注目し、野外でブタクサの周囲の非寄主植物を除去した区画と対照区を設置して比較検討した。その結果、非寄主植物除去区では対照区よりもブタクサハムシの密度が高いことがわかった。それは、非寄主植物のブタクサの葉の量の減少を介した間接効果とブタクサハムシの移出率の増加によるものである。これに対し、非寄主植物による天敵の密度の変化、寄主植物の質の変化を介する間接的な影響は検出されなかった。これらの結果により、ブタクサハムシの密度は周囲の在来植物から直接的、間接的に大きな影響を受けることが示唆された。

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