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一般講演 D1-01

インベントリーデータに基づく東アジア森林の現存量と生産量の把握

*清野達之(筑波大・生命環境),松浦陽次郎(森林総研),梶本卓也(森林総研・九州),新山馨(森林総研),山形与志樹(国立環境研)

東南アジア熱帯林からシベリアの亜寒帯林までの東アジア広域で,森林の現存量と生産量の把握を森林調査のインベントリー・データを基に行なった.インベントリー・データは,演者らが自ら測定したもの,他の研究者からの情報提供,研究ネットワークの利用,そして既存の研究発表を利用した.伐倒調査から得られたアロメトリー式を用いて地上部現存量と地下部現存量を推定した.成長追跡を行なっているプロットでは,年間のバイオマスの増加分にリター量を加える積み上げ法により,地上部純一次生産の推定を行なった.その結果,東アジア広域では緯度が上がるにつれて現存量と生産量は低下する傾向がみられ,緯度の森林でも標高が上がるにつれて現存量と生産量は低下する傾向がみられた.地上部と地下部の現存量の配分比では,熱帯の低緯度ではより地上部へ現存量を配分する傾向がみられた.しかし,シベリアの永久凍土地帯のカラマツ林ではより地下部に現存量を配分する傾向がみられた.同じ緯度の森林でも標高が上がるにつれて,より地下部へ現存量を配分する傾向がみられた.以上の結果から,緯度や標高傾度にそった森林の現存量や生産量の低下は,生育期間の違いによって影響されていることが示唆された.緯度や標高傾度にそった森林の現存量の地上部と地下部の配分比の変化は,生育環境が厳しくなることによって地下部への配分が高くなっていると考えられた.そのため,森林の地上部と地下部を含めた現存量推定では,緯度と標高経度によっては現存量推定の過大・過小評価が生じる可能性があり,地下部の現存量推定の精度の重要性が示唆された.

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