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一般講演 D1-06

ボルネオ島の熱帯ヒース林の植生と土壌特性

高橋克明(京都大・理)

ボルネオの熱帯低地林は、数百種の樹木が生育し、林冠高50mを越えるような巨大な森林である。一方、同じ熱帯低地でも、白い珪砂の堆積層上には熱帯ヒース(ケランガス)林という特殊な森林が見られる。熱帯ヒース林は、他の熱帯低地林に比べて種多様性が低く樹高の低い森林で、土壌は窒素などの栄養塩が乏しいことが知られている。これまで熱帯ヒース林は、砂質土壌上に成立する土地的な極相林と考えられてきた。しかし我々は、熱帯ヒース林は、熱帯低地林が土壌と植生の長期にわたる相互発達の結果形成された森林ではないかと考え調査を行った。

ボルネオ島サバ州内陸部にて、混交フタバガキ林に近いHopea、Shoreaが優占するタイプ(Large-crown:LC)とマキ科の針葉樹Dacrydium が優占するタイプ(Small-crown:SC)の2タイプの熱帯ヒース林を選んだ。0.1haのプロットをSCに二つ、LCに一つ設け、各プロット内のDBH10cm以上の樹木について毎木調査を行うとともに、土壌を採取し分析した。針葉樹のDacrydiumの相対優占度は、SCでは約20%を占めたがLCには存在しなかった。サイト間で土壌湿度に差はなかったため、2タイプの植生の違いは乾燥によるものとは考えにくい。一方、土壌中の窒素濃度またC/N比はLCよりSCで低かった。また土壌中の交換態Mg、Ca濃度もSCでLCより低いことから、SCでは土壌酸性化に伴う陽イオンの溶脱が進んでいると考えられた。さらに土壌断面の観察から、LCに比べSCにおいて漂白層が発達していた事から、植生の変化と土壌のポトゾル化が同時進行している可能性が示唆された。

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