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一般講演 D1-07

枯死有機物のバリエーションが森林の分解過程に与える影響

*上村真由子(神戸大),檀浦正子(神戸大),金澤洋一(神戸大),小南裕志(森林総研関西)

森林土壌への炭素固定の構造や機能を理解することは,長期的な森林の炭素蓄積速度を推定するために必要である。1年あたりの土壌への炭素蓄積はごく微量であるため,実測し,生態系レベルでの蓄積速度を推定することは極めて難しい。従って,リターの土壌への投入速度や,モデル化された土壌中での構造の変化から,土壌中の炭素動態を計算する必要がある。炭素動態モデルは,土壌内に仮想のコンパートメントを設定し,そこでの炭素の蓄積やフローを,環境要因や分解速度などを考慮して計算する。主なモデルは,畑地や草原で発達してきたため,森林に特有な枝・幹・根といった非同化器官の組み込みを詳細に検討するものはあまり多くない。森林土壌への炭素蓄積を明らかにするためには,このようなリターインプットの多様性を考慮したモデルの改良が必要とされる。そこで,本研究では,既存のモデルを森林に適用するための改良,特に有機物のサイズが土壌炭素蓄積に与える影響の組み込みについて検討した。モデルの開発には,既存の土壌炭素動態モデルである,Roth-Cモデルを用いた。Roth-Cモデルは,リターの最初のインプット時に,易分解性と難分解性のコンパートメントに分離される。この分離比が器官の化学性によって変化することが示されている。従って,まず,この器官別の分離比の導入について検討した。さらに,器官のサイズが分解速度に影響を与えるので,その組み込みについて検討した。モデルパラメータの検討は,日本の広葉樹二次林において実測された枝と幹の分解による呼吸速度と重量減少速度との比較によって行った。

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