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一般講演 D3-04

フタバガキ科Shorea laxaの繁殖・更新過程と断片林化の影響

*竹内やよい(総合地球環境学研究所),中川弥智子(名古屋大・生命農学),中静透(東北大・生命科学)

東南アジア熱帯林を特徴づけるフタバガキ科樹木は、多様な送粉者をもつ。これまでの研究では、ハムシなどの小さな甲虫媒の種でも、実際は800mを超える散布が起きており、オオミツバチに匹敵するような大きな花粉があることが明らかになっている。しかし、ハムシはミツバチとは異なり、開放空間には適応しているとは考えにくく、森林が分断化されれば、その間の移動はほとんどなくなってしまうであろう。従って、ハムシ媒種では森林の分断化によって、樹木の結実率、花粉流動に大きな影響が与えられることが予測される。そこでこの研究では、ハムシ媒種を対象として、分断化された森と原生林で、遺伝的多様性、花粉流動、更新パタンを比較し、森林の分断化が植物の繁殖、更新に与える影響を解明することを目的とした。

調査はマレーシア・ランビルヒルズ国立公園内の原生林とその周辺にある断片林で行った。2005年に開花したハムシ媒の種、フタバガキ科Shorea laxaを対象とした。原生林と断片林にプロットを設け、それぞれ4−5個体の開花した成木のマーキングを行った。シードトラップを個体の下に設置し、2005年3月から11月まで開花から結実までのフェノロジーを追跡し、成熟種子も採取した。種子散布後、さらに母樹下にコドラートをもうけて、実生をマーキングし、死亡成長などを1年に渡って追跡した。今回は、結実率、昆虫及び哺乳類による樹上での捕食率、成熟種子の遺伝的多様性、花粉散布距離、実生の生存率について解析し、S. laxaの更新パタンと断片林化の影響を考察する。

日本生態学会