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一般講演 D3-08

花粉媒介者の干渉による閉鎖花率の説明

*西田隆義(京大農),高倉耕一(大阪市環境研),西田佐知子(名大博物館)

生殖干渉とは、種間の性的相互作用に起因するあらゆる適応度の減少と定義され、同種との配偶機会を失うなど全く交雑が生じない場合にでも充分に起こりうる。われわれは、資源競争も寄主利用能力のトレードオフも存在しない食植性昆虫においてなぜ、寄主への特殊化や側所分布が普遍的に生じるのかを理論的に検討し、わずかなレベルの生殖干渉がその主因であることを明らかにした。すなわち、生殖干渉は資源競争と異なり頻度依存的に生じるので、ほんのわずかの影響が正のフィードバック効果を通じて増幅されるため強烈な排除効果を産むのである。そして、生殖干渉が強い場合には側所分布が、弱い場合には寄主への特殊化が生じることが分かった。ここで、寄主植物パッチを生息場所に置き換えると、近縁な植物の生息場所の違いも同様に説明可能である。そこで、最近になってから二次的に接触した近縁な外来ー在来種の系(ヒメオドリコソウとホトケノザ)を用いて、生息場所の空間分布の違いの説明を試みた。両種はほぼ同一の生息場所に生育するが、ごく近傍に混在して生育することはほとんどなく、明瞭な排他分布を示した。ごく隣接して生育する場合には、ホトケノザのほとんどが閉鎖花になるのに対して、ヒメオドリコソウは常に開放花をつけた。ホトケノザの閉鎖花率は、植物体サイズにも影響を受けていたが、その効果は小さかった。閉鎖花自体は、植物の繁殖投資配分が選択圧となって進化したものであろうが、閉鎖花が存在することで近縁種との生殖干渉はある程度、緩和されるようだ。その結果、生殖干渉は弱くなり、両種は小さな空間スケールで互いに集中分布をするものと考えられる。現在みられる両種の空間分布は、弱い生殖干渉の結果としてうまく説明できる。

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